提言

こどもが消えた児童公園
法規制に縛られ、ユーザーニーズに対応できない都市公園
遠くの親水公園、近くのカミソリ堤防、日常生活に恩恵のない親水公園
幾重にも支援を重ねながらも、解決されないシャッター商店街
コインパーキングや未利用地が増加し、景観やネットワークが破壊された市街地
郊外の大規模商業施設に客を奪われ、人が集まらない駅前商業施設
災害時に帰宅困難者であふれかえる都心の駅、道路

私たちはこうした公共空間を望んだのだろうか



明治六年、「太政官布達第十六号(※1」によって我が国に初めて公園が誕生しました。この布達の中で太政官政府は、国民がまだ知らない公園のことを「万人偕楽ノ地」と解説しています。

それから140年。我が国には多彩な公共空間が整備され、私たちは豊かな暮らしを享受しています。

ところが最近になって、街中の公園や地方の商店街などで、人のいない風景をたびたび目にするようになってきました。そこにあるのは、太政官政府が描いた「万人偕楽ノ地」とはかけ離れた、人の声も足音も聞こえないモノクローム写真のような空虚な空間です。なぜ、こうしたことが起きているのでしょう。その原因は、ライフスタイルの変化、少子高齢化、人口減少、都市一極集中といった解決の難しい社会課題に起因しているようです。活力を失った公共空間を、再び元の姿に蘇らせることは容易ではありません。しかし、各種規制や時代に合わなくなった長期計画、管理規則などを見直し、利用者が求める新たな価値を取り入れれば、公共空間は必ずにぎわいふあれる「万人偕楽ノ地」へと生まれ変わらせることができるのです。既に注目すべき取り組みが行政や地域団体の手によって行われています。こうした先駆的な取り組みが社会全体へと浸透していくためには、その普及を後押しするムーブメントが必要です。公共空間のリ・デザインは次の50年、100年に影響を及ぼす重要な事業です。行政や一部の関係団体だけにまかきりにせず、社会全体で取り組むことが重要です。

2030年には世界人口の6割が都市に暮らし(※2、都市集中や少子高齢化などはますます深刻さを増します。大規模地震や異常気象など自然災害の脅威にも直面する中、公共空間をこれまでの延長線で捉えることはできません。日頃、都市計画や建築、地域活性化などに携わる大学教員やプロデューサーなど専門家の間では、こうした問題意識は早くから共有されてきました。そうした折、2020年に東京オリンピックの開催が決まり、都市の再整備が大きく動きだそうとしています。今こそ、公共空間を生まれ変わらせる好機です。こうした思いから「リパブリック・イニシアティブ(Re-public Initiative)」を発足させました。

公共空間の再生は、景観や自然環境への影響を良好なものにし、市民のQOLを高め、幅広い分野のビジネスチャンスを生み出します。リパブリック・イニシアティブは、公共空間に関わるさまざまな活力が結集するプラットフォームとして、経済、社会、環境の「トリプル・ボトムライン(※3」を満たす、新たな時代の公共空間の創出を提案します。

※1) 太政官布達第十六号 「三府ヲ始、人民輻輳ノ地ニシテ、古来ノ勝区名人ノ致跡地等是迄群集遊観ノ場所(東京ニ於テハ金竜山浅草寺、東叡山寛永寺境内ノ類、京都ニ於テハ八坂神社境内嵐山ノ類、然テ此等境内除地或ハ公有地ノ類)従前高外除地ニ属セル分ハ永ク万人偕楽ノ地トシ、公園ト可被相定ニ付、府県ニ於テ右地所ヲ撰シ其景況巨細取調、図面相添大蔵省ヘ可伺出事」 明治六年一月十五日 太政官

※2) 国連ハビタット(人間居住計画)の推計より

※3) 1997年にイギリスの Sustainability社のJohn Elkingtonにより提唱された企業経営の持続可能性評価の指標。その後、都市経営の分野でも広く用いられるようになった

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