ユニバーサルデザインとの出合い

私は筑波大学で生物学を専攻し、その後、静岡大学大学院でデザインを学びました。

町工場の多い東京・大田区で生まれ育ったせいか、元々、ものづくりが好きで、自然に学ぶものづくりをしたいと考えたのが方向転換した理由です。 そして読売新聞社の広告局に4年間務めた後、仲間と一緒にデザイン・プランニング会社を起業しました。時代はバブル経済に突入する頃で、いわゆる“億ション”やハワイの高級リゾートホテルの企画設計を請け負い、会社に寝泊まりしながら仕事に邁進しました。しかし30代に転機が訪れます。31歳の時に父が脳出血で倒れ、家族皆で半身不随になった父を介護しました。32歳の時に妻が末期がんであることが分かり、8カ月闘病した後に死なれてしまいました。

その時に、自分がこれまでやってきた仕事は何だったのか。病気を抱えた人や障害を持った人を助けられるような仕事だったのかと問題意識を持ったのです。そんな矢先に、バリアフリーデザインを提唱するパトリシア・ムーア氏と知り合い、「バリアフリーデザインを勉強したい」と相談をしたら、「その先にユニバーサルデザインという概念があり、これを提唱する建築家のロナルド・メイス氏が、米国のノースキャロライナ州立大学で教鞭をとっている」と助言してくれました。それで私は子育ての合間にノースキャロライナ州立大学を訪ね、ユニバーサルデザインの具体的な手法を学んだのです。

帰国後、1996年にユニバーサルデザイン総合研究所を設立しました。タイミング良くユニバーサルデザインという言葉が流行し始めた時で、自動車や家電、住宅、食品などの会社からお声が掛かり、先行的なノウハウがまったくない中で「みんなのためのデザイン」を共に追求し、いろいろな商品開発や施設開発に関わりました。

ユニバーサルデザインの根幹は「デザイン・フォー・オール」という概念ですが、オールをいかに捉えるかによって多様な可能性を秘めています。つまり商品を使うユーザーだけでなく、その商品を生み出すことで世の中の役にも立つことが大事。多様なステークホルダーに対してメリットを提供することで、より深いユニバーサルデザインとなり得るのです。そこで、私は公益品質を意味する「ソーシャルウェア」という言葉に着目しました。

ものづくりにおける「21世紀品質」開発の循環図

               ものづくりにおける「21世紀品質」開発の循環図

マイケル・ポーター氏が「CSV(クリエーティング・シェアード・バリュー)」という同様の概念を提唱しましたが、これから企業はCSRやメセナではなく、公益と事業益を両立させるビジネスを展開しなければならないと考えます。そこで2014年に一般社団法人CSV開発機構を立ち上げました。現在、CSVを自ら研究しながら、企業のCSVビジネスの支援に積極的に携わっているところです。

赤池学
株式会社ユニバーサルデザイン総合研究所所長
社会システムデザインを行うシンクタンクを経営。環境・福祉対応の商品・施設・地域開発を手がけ、( 一社)環境共創イニシアチブ、(一社)CSV開発機構の代表も務める。グッドデザイン賞金賞、JAPAN SHOP SYSTEM AWARD最優秀賞、KU/KAN賞など、数多くの顕彰を受けている。
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