「屋根」をテーマに公共空間をデザインしたい

Re-Public Initiativeで私が実現したいことは「コモンズルーフ」。

屋根をテーマに、公共空間の新しい概念をデザインしたいと思っています。かつて日本には井戸端会議など、自然発生的に生まれたコミュニティーがたくさんありました。官や民が管理や運営をするのではない。純粋に使いたい人が使える状態にすることで、そこは生きた場所になるわけです。利益を得る人が責任を負う、とてもシンプルな構造でした。

私はコモンズルーフを作るというプロセスを共有することで、それがコミュニティーの中のアイデンティティーとなる公共空間に興味があります。誰もがアクセスできる場所でありながら、コモンズ(共有物)として「思い入れ」を持った人々を生み出すような空間です。

例えば盆踊りの矢倉や祭りの提灯、アドバルーンなど、塔状のものや空に浮かぶものによって、人々は共有意識を持つことができます。それらと一緒に、人々はコミュニティーを記憶するのではないかと思います。

つまり私が言う屋根とは、空に接する構築物や建造物のこと。人々は床(土地)に関しては所有をはっきりさせたがりますが、空に関してはもう少しルーズに扱いますよね。それは風景も同じ。借景という概念があるくらい、風景は誰もが共有できるオープンソースだと思うのです。

コモンズルーフの試験的プロジェクトとして、神戸大学槻橋研究室や構造・テキスタイルデザイナーと共同で、現在、新しい膜構造の建築「トポロジカル・メンブレン」を開発しています。それは継ぎ目なく丸編みしたチューブ状の張力膜が連結された構造で、ゲートや日除けの屋根、広場や公園などの景観要素として活用できる可能性を秘めています。

トポロジカル・メンブレンの全景 photo:大竹央祐

トポロジカル・メンブレンの全景 photo:大竹央祐

東日本大震災以降、「失われた街」模型復元プロジェクトの一環で「記憶の街ワークショップ」を実施してみて、住民が過ごした時間や記憶を模型に取り入れていくことは重要だと感じました。模型を前にして、住民は過去の良い思い出を語り出すんです。それはとても重要なことで、アイデンティティーはこうして作られるべきだと実感しました。

膜構造の建築はまだ専門的なレベルでの開発段階ですが、これがどこかの地域で実装される時には、新しい構造体が生む風景の創出を地域の人々と共有できるように進めていきたいと思います。

トポロジカル・メンブレンの近景 photo:大竹央祐

トポロジカル・メンブレンの近景 photo:大竹央祐

槻橋修
建築家 / 神戸大学工学部建築学科准教授
東京大学生産技術研究所勤務を経て、2002年ティーハウス建築設計事務所設立。2009年より現職。2009年日本建築学会賞(教育)共同受賞。2014年東日本大震災復興支援「失われた街」模型復元プロジェクトが第40回放送文化基金賞受賞(NHK盛岡放送局と共同受賞)。
Authors

Related posts

Top