教育と建築設計とを両輪に

私は早稲田大学理工学部建築学科で週の半分は教鞭を執る一方、NASCA一級建築士事務所の代表として建築設計にも携わっています。大学教授であり建築家でもあることは、私にとってごく自然なこと。と言うのも、かつて私が学生だった頃、早稲田大学で教えていた教授18人のうち5人が現役建築家でした。しかも日本建築学会賞を受賞するような高名な建築家ばかり。教育と建築設計とを両輪にするような人が、早稲田大学には多くいました。

私が同大学院の穂積研究室に属していた頃、穂積先生は早稲田大学本庄高等学院の建築設計を請け負い、企画から現場管理までのすべてを研究室の大学院生に担当させました。私もその1人としてお手伝いしたおかげで、建築設計の一通りを経験することができました。これが、私のスタートだったわけです。

早稲田大学の大学院では、架空の課題は一切行いません。すべて実社会から研究室に委託された案件に基づいて、具体的な提案を行います。PBL(課題解決型学習)と呼ばれるものですね。企業など実際のクライアントと向き合い、実際のプロジェクトを通して建築を学ぶわけです。

また、自治体から空き家や廃校の活用といった地域再生や場作り、町起こしなどの要請もよくあります。地域住民の方々と向き合い、彼らが必要な空間とは何かを一緒になって考え取り組みます。

研究室と事務所が共同で、築100年の古民家を改修した「オーベルジュ雲南」

研究室と事務所が共同で、築100年の古民家を改修した「オーベルジュ雲南」

公共施設のプロポーザルやコンペティションへは、私の研究室と事務所とが共同で応募することが多いですね。案が通った場合には、事務所が中心となって建築設計をするのですが、研究室の大学院生をインターンとして参加させることもあります。

大学に属しながら建築設計をするということは、営業的な側面より、むしろ世の中に一石を投じるような新機軸を盛り込み、新しい建築のコンセプトを標榜し、それに挑戦するということが大きい。とはいえ、実際に建物を建てるのだからリスクもあるのですが、そこはクライアントの理解を上手く得て、個人事務所ではなかなかできないことにも積極的に取り組むようにしています。それが私にとってのやりがいだと感じています。

研究室と事務所が地域再生に携わった、島根県雲南市の「雲南桜まつり」

研究室と事務所が地域再生に携わった、島根県雲南市の「雲南桜まつり」

古谷誠章
建築家 / 早稲田大学創造理工学部教授 / NASCA代表 / 日本建築学会副会長
「茅野市民館」日本芸術院賞、建築学会賞、建築家協会賞、グッドデザイン賞、BCS賞、公共建築賞。「小布施町立図書館 まちとしょテラソ」ライブラリー・オブ・ザ・イヤー大賞、図書館教会建築賞、AACA賞。「実践学園中学・高等学校自由学習館」日本建築大賞。「喜多方市庁舎」などプロポーザル当選多数。
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